Mills, Charlds Wright,1959, The Sociological Imagination, New York: Oxford University Press. (伊奈正人・中村好孝訳,2017,『社会学的想像力』筑摩書房.)
社会学的想像力を手にした人は、より大局的な歴史的場面を、個人ひとりひとりの内的な精神生活や外的な職業経歴にとってそれがどのような意味をもっているのか考えることを通じて、理解することができる。また、それは日々の錯綜した経験のなかで、個々人が自分たちの社会的立場をどのようにしてしばしば見誤ってしまうかを説明してくれる。まさにそうした錯綜のなかでこそ、現代社会の枠組は探求されるし、まさにそうした枠組のなかでこそ、色々な人々の心理も定式化される。こうした作業を行うことにより、ひとりひとりの個人が抱える不安は、私的問題としてはっきりと焦点が合わせられるようになり、公衆の無関心も、公的問題に対する積極的な関与へと変わっていくことになる。
このように想像力を働かせることで、まず自己省察のアイディアを得ることができる。個人は、時代状況のなかに自分自身を位置づけることによってはじめて、自分固有の経験とは何かを理解し、その行く末を見定めることができるようになる。また、まわりにいるすべての個人のもつ可能性を認識することによってはじめて、人は自分の可能性を知ることができる。こうした考え方は、社会学的想像力を具現する社会科学の最初のレッスンでもある。