Simmel, Georg, 1908a, Soziologie: Untersuchungen über die Formen der Vergesellschaftung, Dunker & Hunblot. (居安正訳,1994,『社会学 上巻』白水社.)
人間の社会関係は、絶えず結ばれては解け、解けては再び結ばれるもので、立派な組織体の地位に上ることがなくても、永遠の流動及び脈搏として多くの個人を結び合わせるものである。人間が見つめ合う、嫉み合う、手紙のやりとりをする、午餐を共にする、これという利害がないのに同情や反感をもって触れ合う、親切への感謝から二度と解けぬ絆が結ばれる、誰かが誰かに道を尋ねる、互いに相手のことを考えて着飾ったり化粧したりする。——以上は、人間と人間との間に生ずる一時的或いは永続的な、意識的或いは無意識的な、仮初の或いは由々しい、数知れぬ関係の中から全く勝手に選んだものであるが、そういう関係が絶えず私たちを結び合わせているのである。ここに見られる諸要素間の相互作用というもの、これこそ、社会という極めて明白でありながら謎の多い生命体が強靱であり弾力がある所以、多彩であり統一がある所以なのである。社会の概念というと直ぐ思いつく、あの大きな制度や超個人的な組織は、すべて個人と個人との間を一瞬の休みもなく永遠に往復する直接の相互作用が——永続的な構造や独立の構成物に——結晶したものにほかならない。勿論、結晶することによって、制度や組織が独自の存立及び独自の法則を得て、この相互に規定し合う生命に向って対立することもあろう。しかし、不断に自己を実現して行く生命としての社会は、諸個人が、互いに与え合う影響力や規定力によって結ばれているということをつねに意味するものである。それゆえ、社会というのは、もともと、機能的なもの、諸個人の能動的及び受動的な活動のことであって、この根本性格から見れば、社会と言うより、社会化と言うべきものである。