貧者のカテゴリー(Simmel 1908b=1994: 96-7)


Simmel, Georg, 1908b, Soziologie: Untersuchungen über die Formen der Vergesellschaftung, Dunker & Hunblot. (居安正訳,1994,『社会学 下巻』白水社.)

「貧者」のこの社会的意義にしてはじめて、それが個人的な意義とは区別されて、貧者を社会の内部におけるある種の身分あるいは統一的な層へと結集させる。だれかが貧しいということのみによっては、彼はすでに述べたようにまだ社会的に定められたカテゴリーには所属しない。彼はまさに貧しい商人であり、貧しい芸術家、貧しい従業員等々であり、したがって彼の活動あるいは位置の性質によって規定されたこの系列のなかに留まっている。この系列の内部において彼は彼の貧困によって、等級的に変容された地位を占めるが、しかし諸個人は、さまざまな身分と職業とにおいてこの段階にあり、彼らの生まれた階層の境界をこえて、特別の社会学的な統一体へけつして総括されはしない。

彼らが扶助される——たとえ現実には生じないとしても、しばしばすでに全状況がこれを普通は要求するばあい――瞬間に、はじめて彼らに、貧困によって特色づけられる圏に入る。たしかにこの圏は、その成員の相互作用によって結合されているのではなく、全体として社会がその成員にたいしてとる集合的な態度によって結合されている。