社会学の入門書は毎年、数多く出版されています。入門書は社会学の理論や概念を説明したり、考え方について論じられているものです。入門書を読んでみて、具体的−抽象的という軸と教科書的-読み物的という軸で分類したものが以下のマップです。このマップは私個人の考えによるものです。
社会学の概論的授業で教科書として採用されるのは、このマップの半分より上、そして真ん中から左側といったあたりだと思います。具体的には奥村隆編『はじまりの社会学』から上と左上にあるものです。真ん中から右側の方にいくとよりレベルの高い、社会学の歴史や理論に関する授業で教科書として採用されるものになるかと思います。また、このマップの左下に位置する文献は広く一般書として読まれる入門的なもの、右下に位置する文献は社会学専攻の学生が社会学の考え方を学ぶのに適した入門書となっています。なお、このマップは2019年の12月に考えたものなので、時間が経つと位置を変えたくなります。参考程度のものととらえてください。
2016年から2020年までの社会学の入門書と概説書をリスト化し、目次を掲載しています。刊行年の降順です(ただし、刊行月の区別はしていません)。
編著者名 タイトル 出版社名 刊行年 | 目次(主に章) |
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油井清光・白鳥義彦・梅村麦生編 『社会学』 昭和堂 2020 出版社HP | 序章 社会学とはどういう学問か――個人と社会(白鳥義彦) 第Ⅰ部 つながりと差異の社会学 第1章 日常生活と社会――相互行為の社会学(小島奈名子) 第2章 社会の時間と個人の時間――時間の社会学(梅村麦生) 第3章 災害から見えるもう一つの社会――ボランティアの社会学(林大造) 第4章 紛争と物語――記憶と政治の社会学(酒井朋子) 第Ⅱ部 身体・ジェンダー・マノノリティの社会学 第5章 ファッションがつなぐ社会と私――身体の社会学(後藤吉彦) 第6章 現代的な生きづらさ――マイノリティの社会学(徳田 剛) 第7章 性/性別の「あたりまえ」を問い直す――ジェンダーとセクシュアリティの社会学(東園子) 第8章 社会のなかの医療――健康と病の社会学(田村周一) 第Ⅲ部 サブカルチャー・観光・非日常の社会学 第9章 サブカルチャーは世界を旅する――サブカルチャーとグローバリゼーションの社会学(油井清光・小島奈名子・平井太規) 第10章 マンガが生み出す読者たちの共同体――メディア受容の社会学(雑賀忠宏) 第11章 情報、趣味と表現活動――情報プラットフォームの社会学(エルナンデス・アルバロ) 第12章 観光現象から考える「社会」と「私たち」のすがた――観光の社会学(今井信雄) 第13章 日常のなかの非日常――消費の社会学(藤岡達磨) 第Ⅳ部 移動・家族・仕事の社会学 第14章 移民という存在――移動の社会学(佐々木祐) 第15章 国際結婚と地域社会――移動の女性化とグローバリゼーションの社会学(平井晶子) 第16章 秩序か束縛か――組織の社会学(竹中克久) 第17章 働くことの多層性・多相性――産業・労働の社会学(大久保元正) 終章 大学で学ぶということ――「社会学」をこえて(白鳥義彦) |
宇都宮京子・西澤晃彦編 『よくわかる社会学 第3版』 ミネルヴァ書房 2020 出版社HP | Ⅰ 社会学とは何か Ⅱ 〈私〉をめぐる社会学 Ⅲ ジェンダーとセクシュアリティをめぐる社会学 Ⅳ 若者と子どもをめぐる社会学 Ⅴ 家族をめぐる社会学 Ⅵ 地域をめぐる社会学 Ⅶ 労働・職場をめぐる社会学 Ⅷ メディアと情報化をめぐる社会学 Ⅸ 階級・階層をめぐる社会学 X グローバル社会とエスニシティをめぐる社会学 Ⅺ 社会運動・NPO・ボランティアをめぐる社会学 XⅡ いろいろな社会学 XⅢ 社会学の歴史:西欧世界の社会学史 研究者紹介 |
長谷川公一・浜日出夫・ 藤村正之・町村敬志 『社会学 新版』 有斐閣 2019 出版社HP | 序章 新しい社会学のために 第1部 行為と共同性 第1章 親密性と公共性 第2章 相互行為と自己 第3章 社会秩序と権力 第4章 組織とネットワーク 第5章 メディアとコミュニケーション 第2部 時間・空間・近代 第6章 歴史と記憶 第7章 空間と場所 第8章 環境と技術 第9章 医療・福祉と自己決定 第10章 国家とグローバリゼーション 第3部 差異と構造化 第11章 家族とライフコース 第12章 ジェンダーとセクシュアリティ 第13章 エスニシティと境界 第14章 格差と階層化 第15章 文化と再生産 第16章 社会運動と社会構想 |
出口剛司 『大学4年間の社会学が 10時間でざっと学べる』 KADOKAWA 2019 出版社HP | 第1部 社会の謎と正体を探求する 1章〈社会〉の謎と正体を探る(1) 2章〈社会〉の謎と正体を探る(2) 3章 社会学の流儀 4章〈社会〉を知るには集団を見よ 第2部 身近な世界から出発しよう 5章 家族の作り方 6章 性愛と親密な関係 7章 都市と地域社会 8章 変容する都市空間 第3部 働き方と職場の人間関係 9章 人が働く/人を働かせる方法 10章 日本人の働き方 11章 働き方を見直す 12章 集団とネットワーク 第4部 日常と非日常のインターフェイス 13章 神話世界としての消費空間 14章 宗教と社会 15章 政治という非日常 16章 グローバル化する世界と日本 第5部 社会学物語 17章 社会の発展法則を解明せよ! 18章 危機の時代にこそ、社会学を! 19章 社会の秩序はこうしてできている 20章 現代社会学への道 |
友枝敏雄・山田真茂留・ 平野孝典編 『社会学で描く現代社会 のスケッチ』 みらい 2019 出版社HP | 序章 21世紀の日本社会を生きる――今、大学で学ぶこと 第1部 常識を疑う 第1章 友人とは誰のことか? 第2章 「絆」を強くすれば自殺は減るのか? 第3章 美容整形のきっかけとは? 第4章 日本人は宗教を信じていないのか? 第5章 「未熟」な若者がフリーターやニートになるのか? 第6章 日本人がオリンピックで日本代表を応援するのは当たり前か? 第7章 「いい人」がボランティアになるのか? 第8章 「オタク」は孤独か? 第2部 社会の謎を解く 第9章 なぜ「スマイル」は0円なのか? 第10章 なぜ結婚する人が減っているのか? 第11章 なぜいじめを止められないのか? 第12章 なぜ若者はSNSにはまるのか? 第13章 なぜ原発は東京にはないのか? 第14章 なぜ「家族」を求めるのか? 第15章 なぜネット上で「炎上」が生じるのか? 第16章 なぜ<体育会系>は就活が人気なのか? 第3部 社会の未来を考える 第17章 「格差と不平等」にどう向き合うか? 第18章 「子どもの貧困」にどう向き合うか? 第19章 「地球環境問題」にどう向き合うか? 第20章 「大規模災害」にどう向き合うか? 第21章 「人口減少」は地域社会をどう変えるか? 第22章 「移民」は社会をどう変えるか? 第23章 21世紀における社会と公共性 |
田中慶子・中根光敏 『社会学する原動力』 松籟社 2019 出版社HP | まえがき――社会学する原動力(田中慶子) 第1章 〝社会学の歌〟を聴け(中根光敏) 第2章 ファッションと感情労働の社会学(田中慶子) 第3章 消費主義社会を考える(中根光敏) 第4章 労働問題の医療化――「うつ病」という労働災害の登場(田中慶子) 第5章 消費される労働(中根光敏) あとがき(中根光敏) 付録 論文の書き方(中根光敏) |
川田耕 『生きることの社会学 ——人生をたどる12章』 世界思想社 2019 出版社HP | はじめに 第1章 社会とは何か 第2章 出生をめぐる社会学 第3章 家族の歴史社会学 第4章 親子の心理・社会学 第5章 学校と国家の政治社会学 第6章 成長における幻想と文化 第7章 攻撃性の社会学 第8章 性愛と社会 第9章 働くことと生きること 第10章 老いゆく日々と社会 第11章 死と社会 第12章 これからの社会と私たち |
田中正人・香月孝史 『社会学用語図鑑 ——人物と用語でたどる 社会学の全体像』 プレジデント社 2019 出版社HP | 本書の使い方 社会理論の展開 近代の幕開け 年表 人物紹介 用語解説 近代から現代へ 年表 人物紹介 用語解説 未来へ |
大澤真幸 『社会学史』 講談社 2019 出版社HP | 序 社会学に固有の主題 第1部 社会学の誕生――近代の自己意識として 1.古代の社会理論 アリストテレス 2.社会契約の思想 社会学前夜 3.社会科学の誕生 4.マルクス――宗教としての資本主義 第2部 社会の発見 1.フロイト――無意識の発見 2.デュルケーム――社会の発見 3.ジンメル――相互行為としての社会 4.ヴェーバー――合理化の逆説 第3部 システムと意味 1.パーソンズ――機能主義の定式化 2.〈意味〉の社会学 3.意味構成的なシステムの理論――ルーマンとフーコー 4.社会学の未来に向けて |
奥村隆編 『はじまりの社会学 ——問いつづける ためのレッスン』 ミネルヴァ書房 2018 出版社HP | 第1章 社会と社会学―社会学は社会のどこで生まれるか 第2章 相互作用と自己―〈自分らしく生きる〉とはどういうことか 第3章 家族と親密な関係―「フツーの家族」は普通なのか 第4章 ジェンダーとセクシュアリティ―男社会の構造は変わりうるか 第5章 労働と企業組織―働くことは喜びか,苦しみか 第6章 環境と科学技術―環境は成長と開発の呪縛を解くことができるか 第7章 医療・保健・福祉―病いや障害は「不幸」なことなのか 第8章 逸脱と社会病理―私たちはなぜ「よくないこと」をしないのか 第9章 階層・階級・不平等―親から子どもへ格差が受け継がれやすいのはなぜか 第10章 都市とコミュニティ―都市研究には社会学のどんな姿が映しだされているか 第11章 グローバリゼーションとエスニシティ―社会や社会学理論にどのような変化をもたらしたか 第12章 文化と宗教―宗教は所属を生むか,孤独を生むか 第13章 メディアとコミュニケーション―「民意を問う」とはどういうことか 第14章 社会運動とNPO/NGO―市民は社会を変革できるか 第15章 国家・権力・公共性―パラリンピックはなにを夢見るのか |
盛山和夫・金明秀・ 佐藤哲彦・難波功士編 『社会学入門』 ミネルヴァ書房 2017 出版社HP | 第1章 社会学とは何か 第2章 自己と社会 第3章 家族とジェンダー 第4章 市民社会と公共性 第5章 階級・階層 第6章 教育と労働 第7章 都市と地域社会 第8章 社会運動 第9章 エスニシティ 第10章 福祉国家と社会福祉 第11章 貧困と社会的排除 第12章 セクシュアリティ 第13章 健康と医療 第14章 環境と科学技術 第15章 災害とボランティア 第16章 メディアと文化 第17章 宗教 第18章 犯罪と逸脱 第19章 政治と国家 第20章 グローバリゼーション 第21章 社会学の理論と方法 |
工藤保則・大山小夜・ 笠井賢紀編 『基礎ゼミ 社会学』 世界思想社 2017 出版社HP | 第Ⅰ部 日常生活を問う 第1章 自分と他人の関係ってどんなもの?――アイデンティティ、他者、まなざし(奥村隆) 第2章 家族ってどんな社会?――親密性、第一次集団/第二次集団、ライフコース(柴田悠) 第3章 福祉や教育はどうやって決まる?――福祉国家、大きな政府、社会規範(三谷はるよ) 第4章 地域社会は誰が作る?――コミュニティ、アクションリサーチ、アーバニズム(笠井賢紀) 第5章 働くってどういうこと?――官僚制、組織(阿部真大) 第Ⅱ部 身近な文化を問う 第6章 文化って何?――風俗、考現学、消費社会(工藤保則) 第7章 私たちはメディアをどう使う?――情報化、社会的性格(白土由佳) 第8章 性を意識するのはどんなとき?――ジェンダー、性別役割分業、セクシュアリティ(米澤泉) 第9章 エスニシティは身近にある?――グローバリゼーション、エスニシティ、民族関係(挽地康彦) 第Ⅲ部 社会につながる 第10章 格差がなくならないのはなぜ?――不平等、学歴社会、階級・階層(吉川徹) 第11章 社会問題はいかにして起こるのか?――社会問題、ラベリング、社会的コントロール(大山小夜) 第12章 社会運動って特別なもの?――NPO/NGO、ネットワーク、新しい社会運動(宮垣元) 第13章 自然環境といかに向きあうか?――科学技術、リスク(青木聡子) 第14章 政治は政治家だけのものではない?――選挙、民主主義、政治的社会化(西田亮介) |