移民の子どもの教育の現状を具体的にみていこう。まず,2019年の文部科学省調査によると,不就学,つまり義務教育の年齢にありながらどの教育機関にも所属していない可能性のある外国籍の子どもは2万2701人いて,これは把握できている外国籍の子どもの18.3%を占める1(13)。背景には,家庭の経済的事情やきょうだいの世話・家事,いじめなどの人間関係,学校の受け入れ体制の問題がある。くわえて,教育を受けさせる義務・教育を受ける権利が国民のみを前提としていることが,外国籍の子どもを不就学に導いてしまうことが指摘されている(「制度的に構造化された不就学」)(小島2016: 佐久間2006)。国際的には子どもの権利条約のようにすべての子どもの教育を保障するべきと定められているが,外国籍の子どもには日本国籍の子どもと同等の教育機会が保障されていないのが日本の実情である(髙橋2019)2。
学歴社会の中で,義務教育を受けないまま労働市場や社会に参加していくことは非常に難しい。特定の集団が不利を被る(被りやすい)仕組みが制度や社会構造にあることを制度的人種差別(institutional racism)と呼ぶが(Rodgers 2015),日本の教育も,国籍による教育機会格差の存在を許容する制度的な仕組みを内包しているといえるだろう。
- 不就学の可能性のある外国籍児童生徒数が,住民基本台帳に登録されている外国籍の小学生相当・中学生相当の数に占める割合を算出した。 ↩︎
- 文部科学省は2019年に各自治体に対して『外国人の子供の就学の促進及び就学状況の把握等について(通知)』を出しているが,実態は日本国籍と外国籍とで就学状況に差がある。 ↩︎
- 小島祥美,2016,『外国人の就学と不就学——社会で「見えない」子どもたち』大阪大学出版会.
- 佐久間孝正,2006,『外国人の子どもの不就学——異文化に開かれた教育とは」勁草 書房.
- Rodgers, Selena T., 2015, “Racism,” Encyclopedia of Social Work, https://doi.org/10.1093/acrefore/9780199975839.013.1009
高橋史子,2021,「日本の学校も多文化社会の中にある」中村高康・松岡亮二編『現場で使える教育社会学――教職のための「教育格差」入門』ミネルヴァ書房,232–249.pp.235-6