移民の子どもの低い進学率(高橋 2021: 238)

 学校経験と同様,進学についても移民の子どもは困難を抱えている。を基にした研究によると,母親が日本人の子どもと比べると,母親が外国籍の子どもの高校在学率は明らかに低い(表12-1)(是川2019)1(17)。教育制度が多言語・多文化に対応できていないために,子どもの日本語能力の低さや学校文化への不適応などが解消されていない結果と解釈できる2

 近年は移民の子ども間の進学率や進路の差に着目した研究も増えてきた。5年前から日本に居住している19〜21歳の進学状況を2010年国勢調査データで国籍別にみると,日本国籍の大学進学率が45.2%、韓国・朝鮮,中国は47.0%、44. 5%であるのに対し,ベトナム30.0%、フィリピン9.7%,ペルー11.3%、ブラジル11.8%とかなり低い。さらに,ベトナム,フィリピン,ペルー,ブラジル国籍者の19〜21歳における高校在学率は学齢超過,留年,定時制・通信制高校への通学などによって4〜5%と高く,学校歴も含めると数値以上の教育達成格差があると考えられる(樋口・稲葉2018: 572)。このような実態は,日本の教育制度がさまざまな言語や文化に対応できておらず,「日本人」化しなければ国内での教育達成が難しい状況を示唆している(額賀 2016; 額賀・三浦 2017など)。

  • 是川夕,2019,『移民受け入れと社会統合のリアリティ』勁草書房.
  • 額賀美紗子,2016,「フィリピン系ニューカマー第二世代の親子関係と地位達成に関する一考察――エスニシティとジェンダーの交錯に注目して」『和光大学現代人間学部紀要』9:85–103.
  • 額賀美紗子・三浦綾希子,2017,「フィリピン系ニューカマー第二世代の学業達成と分岐要因――エスニック・アイデンティティの形成過程に注目して」『和光大学現代人間学部紀要』10:123–140
  1. 親の学歴や教育意識の子どもへの影響について,特に母親の学歴や教育意識が子どもの教育達成に影響するという研究がある(本田2008など)。 ↩︎
  2. 母親の国籍は,母親の学歴,ひとり親家庭やきょうだい数が多いといった家族形態ないし子どもの性別よりも高校在学と強く関連している(是川2019) ↩︎

高橋史子,2021,「日本の学校も多文化社会の中にある」中村高康・松岡亮二編『現場で使える教育社会学――教職のための「教育格差」入門』ミネルヴァ書房,232–249.pp.238