生活保護の基本原理と基本原則

生活保護の4つの基本原理(自立生活サポートセンターもやい 2017; 平沢 2021)

  • 国家責任の原理……生活に困窮する人に対し、憲法25条に規定する生存権保障の理念にもとづき、国の責任において保護を実施する。
  • 無差別平等の原理……人種、信条、性別、社会的身分や、生活困窮におちいった原因にかかわらず、現在の困窮状態だけに着目して保護を行なう。貧窮に至った理由や過去の生活の履歴は問わない。
  • 最低保障の原理……憲法で定められた健康で文化的な生活水準を維持できる最低限度の生活が保障される。実際の保護基準については、生活保護法第8条の規定により厚生労働大臣が設定することになっている。
  • 補足性の原理……仕事の収入や資産、利用できる他の制度を活用しても、なお健康で文化的な生活水準に満たない場合、その不足分を補う。

・生活保護の4つの基本原則(自立生活サポートセンターもやい 2017; 平沢 2021)

  • 申請保護の原則……本人やその扶養義務者などの申請にもとづいて、行政機関が審査した上で保護を開始する。ただし、本人が急迫した状況にあるときは、申請がなくても必要な指導を行なうことができる。
  • 基準および程度の原則……保護は、厚生労働大臣の定める基準にもとづき、不足分を補う程度において行なう。つまり、保護費は最低生活費全額ではなく、そこから受給者の収入充当額を差し引いた額を支給する。
  • 必要即応の原則……保護は、本人の年齢、性別、健康状態など実際の必要性を考慮して、個々人の状況に合わせて行なわれる。
  • 世帯単位の原則……世帯を単位として保護の要否や程度が定められる。大学生などの世帯分離という例外もある。

自立生活サポートセンターもやい,2017,『先生、貧困ってなんですか——日本の貧困問題レクチャーブック』合同出版.

平沢和司,2021,『格差の社会学入門——学歴と階層から考える 第2版』北海道大学出版会.