「都市社会学」の授業資料

地域調査のテーマ/問いの探索

はじめに—注意点

  1. 本ホームページで説明している地域調査とは中野が担当している授業の課題として設定されているものです。各種文献で説明されている地域調査とは意味が異なります。
  2. 課題の内容は大学によって若干異なる可能性があります。課題の内容は各授業で説明しますので、ここでの説明は参考程度に留めてください。

地域調査の方法

地域調査は大きく分けて次の4つの方法からなります。各自の問いに合わせて適宜組み合わせてください。

  1. 文書資料の収集、整理、分析
  2. 統計資料の収集、整理、分析
  3. ビジュアル資料の収集、整理、分析(※ビジュアル資料とは写真や地図などを指します)
  4. 非参与観察(非関与型フィールドワーク)の実践、分析


地域調査の問いを考えよう

①調査の問いを考える「地域調査」のスタート。どういう答えが得られるのかを想定しながら、問いを考えるとよい(答えが出なさそうな調査の問いは「手に負えないレベルのもの」かもしれない)。先行研究が見つかれば、それを参考に問いを立てることができる。
②調査の問いに答えるための論拠を探し出すこの授業の「地域調査」の場合、論拠となるのは文書資料や統計データ、非参与観察など。調査の問いに答えるためにどのような論拠を集めればよいか考えよう。
③調査の問いに答える「地域調査」のゴール。期間は短いので、納得できる結論を得られるかどうかはわからない(調査にかけられる時間は、他の授業との兼ね合いもある)。そうした限界を踏まえつつ「とりあえず」の結論を得られるようにしよう。

調査の問いや調査対象の地域を検討する(舩橋 2012)

  • 社会的重要性……その対象の有する社会的意義や影響が重要であること→その対象が他の人にとっても関心を集めるものか。
  • 学問的重要性……研究によってもたらされる知見が学問的に見て貴重であること→学問的に注目されているもの/社会的に重要なのに誰も研究していないもの
  • 情報収集の可能性……ある調査対象についての情報を、自分の持っている資源や能力などの条件のもとで、首尾よく収集可能かどうかということ。

舩橋は他に「研究主体としての蓄積性と展開性」をより長期の時間的展望で大切な判断基準としている。蓄積性とは類似の問題を複数の対象に即して調べること、展開性とはそれまでの蓄積を生かしながら、隣接する領域での調査研究を行うこと。授業では長期の時間的展望で調査はできないが、卒業論文などの学位論文ではこの点が重要になる。

舩橋晴俊,2012,『社会学をいかに学ぶか』弘文堂.


問いを具体的に検討する

地域(場所)の「いま」を調べる……対象地域(場所)が現在どのようになっているのかという問い。現在を調べることにどのような意義があるのかを考えよう。

地域(場所)の「変化」を調べる……対象地域がどのように変化しているのかという問い。データや資料を活用する。どの変化に着目するのかを考えよう。

  • 月島地区の人口の変化を調べる(増えているならなぜ?)
  • 月島地区の住民の年齢層を調べる(少子化している?多子化している?)

複数の地域(場所)を「比較」して調べる……同じカテゴリーに属する地域(場所)を比べて、どのような共通点があるか、相違点があるかという問い。ただし、「複数の地域を同じカテゴリーに属する」とみなすのは難しい。意味のない比較になってしまう可能性がある。

  • 六本木ヒルズと東京ミッドタウンの公共空間の構成、監視体制

調査対象と調査方法のマトリックス

調査対象を「市区町村」「地区」「場所」に分類し、それぞれどのような調査方法が適しているかを考えてみましょう。ここでは調査対象と調査方法を組み合わせてマトリックスを作成してみました。

◎かなり適している ○適している △あまり適していない ×まったく適していない

問いを考えるためのヒント

  • 少子化、高齢化、公害、待機児童問題など社会問題に絡めて問いを構成する。
  • 授業やテキスト(入門書・概説書)に出てきた概念を参考にして問いを構成する。
  • 「住みたい街ランキング」など不動産広告で用いられている「統計データのようなもの」を根拠に問いを立てない。
  • 「××は住みやすい街かどうか」「××に住むことのメリット/デメリットは何か」のように主観的で価値基準が不明な問いを立てない。
  • COVID-19の影響を過度に評価しない。