移住ネットワーク(Koser 2016=2021: 42-3)

 大部分の移民は、すでに友人や家族が定住し、トランスナショナルな移住ネットワークを形成している国に移住する。今日、移民が増加している主な理由の一つが、このような移住ネットワークの存在であるという議論があり、そのネットワークが自己永続的な循環過程を作り出している。移民が増え続けているということは、かつてないほど多くの人々にとってすでに国外に住んでいる友人や家族がいるということであり、また移民の地理的な分布が変化しているということは、移住ネットワークによって、貧しい国の国際移住希望者ともっと豊かな国の移住候補地が、かつてよりも結びつきやすくなっているということを意味する。移住ネットワークは、主に3つの方法で国際移住を促すとされている。第1は、しばしば新しい通信技術を利用したりして国際移住に関する情報を提供することだ。第2は、移住希望者の渡航費用を資金面で支援することだ。第3は、移民の最初の滞在先を提供し、職探しを手伝い、また他の経済的・社会的な支援を行うことによって、移民の定住を支援するために重要な役割を果たすことだ。

 移住ネットワークの性格はそこにおける移民の歴史や国家的な条件、移民の社会文化的な特徴によって大きく異なっていることが、研究によって実証されている。ただ、それにもかかわらず、移住先の国の経済的な繁栄の度合いに関係なく、ネットワークはおおむね機能し続けているというのが、移住ネットワークに対する重要かつ一般的な見方だ。その勢いを政策的に止めることは難しいということも、研究によってわかっている。

Koser, Khalid, 2016, International Migration: A Very Short Introduction 2nd ed., Oxford, Oxford University Press.(平井和也訳,2021,『移民をどう考えるか――グローバルに学ぶ入門書』勁草書房.)pp.42-3