界が作用したり変化したりする原動力(ブルデュー)

 界の力学を生み出す原理は、界の構造の特殊な布置、界のなかで互いに対峙し合うさまざまに種別的なかのあいだの距離、隔たりにあります。界のなかで作用している力、その事実ゆえに分析家が関与的であるとして選び出した力は、もっとも重要な差異を生み出しているためにそういえるのですが、それこそ特定種の資本を定義している力です。私がゲームや切り札について述べたように、ある界との関係においてでなければ、ある資本が存在したり作用したりすることはありません。資本は界に対する権力、それらの分布がまさしく界の構造をなしているような物質化された、あるいは身体化された生産手段や再生産手段に対する権力、さらには界の通常の作動を定めている規則性や規則に対する権力、それゆえに界のなかで生み出される利潤に対する権力を与えるものです。

 潜在的な力と顕在的な力からなる力の場として、界はこれら力の布置を存続させたり変容させたりすることを目的にした争いのくりひろげられる場でもあります。さらに界は有力な位置のあいだの客観的関係の構造として、あらゆる戦略の基礎になっていて戦略の方向を定めています。界のなかの有力な位置を占める者たちは、自分の位置を守ったり向上させたりするため、そして自分自身の生産物にもっとも好都合な序列化の法則を押しつけるため、個人としても集団としても、あらゆる戦略を繰り出すのです。言い換えれば、行為者たちの戦略は、界における、すなわち特定種の資本の分布における行為者たちの位置に依存しており、彼らが界をどのように認識しているかに依存しています。つまり界に対する彼らの視点なのですが、この視点自体、界のなかでの位置にもとづいて採用されている視点にほかなりません。


Bourdieu, Pierre and Loïc J. D. Wacquant, 1992, Réponses: Pourune Anthropologie Réflexive, Paris: Édition du Seuil. (水島和則訳,2007,『リフレクシヴ・ソシオロジーへの招待——ブルデュー、社会学を語る』藤原書店.)p.137