『ゴールドコーストとスラム』における社会地図(高木 2018)

 シカゴ大学の大学院生として都市研究を行っていたゾーボーは,ミシガン湖の湖岸に広がるシカゴの高級住宅街である『ゴールドコースト』とこれに隣接するスラム街であるニア・ノース・サイド地区を数多くの社会地図を用いて分析した。ここでゾーボーは,隣接する2つの地区の社会的世界の違いを明確に示すとともに,スラム街に少年非行などの社会問題が集積していることを明らかにしている。たとえば図表7-3では『紳士録』に掲載された人の居住地が点で示されているが,地図の上部(ゴールドコースト)に掲載者を示す点が集まり,さらには多数の掲載者がいることから塗りつぶされていることがわかる。これに対して非行少年達の居住地(図表7-4)は,図表7-3とは対照的に湖岸から離れた地域(地図中央部から下。リトルイタリーを中心としたニア・ノース・サイド地区)に広がっており,『紳士録』掲載者の居住地とは一致しないことが見て取れる。この2枚の地図を重ね合わせて考えることで,少年非行が階層的に低い人びとが集住する地域で発生していることがわかる。こうした複数の地図を同時に検討することで社会-空間構造の理解を深めることができるのである


高木恒一,2018,「社会−空間構造の分析手法」森岡清志・北川由紀彦編『都市社会構造論』放送大学教育振興会,102-117.pp.107-8, 109