「再生産労働の国際分業」と呼ばれる現象がある(パレーニャス 2002)。ここでは労働力の送り出し国と受け入れ国の双方の女性を巻き込んで3層の再生産の移転の構造があるという。つまり、先進国の「特権階級」の女性たちがフィリピン人家事労働者の低賃金サービスを買う一方で、家事労働者自身はフィリピン国内のより貧しい女性の、より低賃金のサービスを残された家族のために同時に買っているのだ。こうしてケア労働の国際移転が起こる現象をパレーニャスは「グローバリゼーションの使用人」と象徴的に表している。
こうした現象については、アーリー・R・ホックシールドによっても「グローバルなケアの連鎖(ケアチェーン)」が指摘されている(Hochschild 2000)。先進国で働く高学歴の女性、移住家事、介護などのケア労働者、その移住家事労働者の子どもの世話をする女性、とさまざまな場所と階層において、まさにチェーンが途切れずにつながっていくように、女性の連鎖が見て取れるのである。連鎖構造の勝者は北の国々の高学歴女性を動員できる多国籍資本であり、より下位の女性を搾取する構造にあることが指摘された。このようにモビリティの高まりは、地理的な移動と階層的な移動の複雑な交差をもたらし、グローバルな不平等としても姿を現している。
[1] 山口恵子,2022,「グローバル化とどのように向き合うのか」平井太郎・松尾浩一郎・山口恵子『地域・都市の社会学——実感から問いを深める理論と方法』有斐閣.