東京一極集中の進行過程で、地域間の人口バランスは、量的な意味だけでなく、ジェンダー的にも崩れてきている。地方圏の大半の自治体が女性比率を減らす一方、東京圏の人口に占める女性の割合が増加し、2000年以降にその傾向は顕著である。そして、これは日本だけではなく、世界の中枢的な大都市圏において普遍的な現象である(林 2016)。
東京圏の女性比率が高まる理由の中で最も重要なのは、グローバル資本主義の論理に基づく産業立地のあり方である。金融・情報関連の高度な専門技術職は東京を中心としたグローバルシティに集中・拡大する傾向にあるが、これを支える都市型の事務職やサービス業に女性が就くことが多いためである。また、1990年代以隆、女性の大学進学率や就業率が急上昇し、男性の比率に追い付いてきたことも重要である。以前よりも、女性が有力な大学や企業で就職することが増えたが、結果として東京に居住する女性が増えたのである。さらには、女性の場合、配偶者や恋人の男性より収入が低いことが多く、自分の意思で居住地を決められずに、Uターン比率が低くなることの影響も考えられる。
一方、東京圏の女性比率の高まりに関しては、東京の方が地方よりも家父長制から自由で、「寛容性」を尊重する価値観が根付いているからだという説明の仕方も根強い。ただし、この点については慎重に考える必要がある。近年行われた計量調査データの多くは、性別役割分業規範において顕著な地域差がなくなっていることを示している。現在は、伝統的な地縁社会が地方圏でも空洞化し、地域を超えるウェブ社会の影響力が強まった結果、都会と地方の関係がシームレスになりつつある時代である。東京の方が家父長制から自由であり、地方圏の方が伝統的な価値観に囚われているから仕方がないのだ、という色眼鏡を外してみないと、地方出身の女性の選択肢を広げる可能性は見えてこないのではないか。
地方圏で生まれ育った女性にとって、家父長制(=性別と年齢に基づく男性の女性支配)の地域的な現れ方も一つの考慮要素として、「将来どこの地域で暮らすのが正解なのか」という問いは重要性が高い。
轡田竜蔵,2023,「家父長制と地方出身女性の選択肢——山内マリコ論を手がかりに」大貫恵佳・木村絵里子・田中大介・塚田修一・中西泰子『ガールズ・アーバン・スタディーズ——「女子」たちの遊ぶ・つながる・生き抜く』法律文化社,133-53.