建築家ジョン・ジャーディの考え方(六耀社編 2003: 116-8)

六耀社編,2003,『集客』六耀社.

 40年ほど前、トスカナ地方の丘陵村落を訪ねているとき、人々が交流してコミュニティを経験する場所が、ヨーロッパの古い偉大な都市の広場や中庭やくねる街路だということに気がつきました。人々が気に掛けるのは建物ではなぐ建物の間の空間だということも見て取りました。こうした場所は自動車からは自由で、豊かでヒューマンスケールな体験を提供し、好奇心をうながし、こうしたコミュニティの発想をアメリカに持ち帰りました。アメリカでは、大都市での多層的で共感的な経験が郊外スプロールに取って代わられていました。コミュニティ感覚の再発明を目指すなかで、人々が集まり、うろつき、買い物をし、他の人を眺める最後の場所に注目しました。それがショッピングセンターです。われわれの仕事はずっと「人々を集めること」でしたが、ほかの開発業界は独立して孤立した建物を造ること
都市の共感的な体験を再生するためには、われわれはarmature(仮枠)から始めます。これは彫刻家が使う用語で、人間像を彫刻するときまず針金のフレームで仮枠を作り、そこに肉体のマスや特徴が適用されます。同じように、われわれも仮枠を作り、そこに実験的な回遊パターンや水まわり、のディテールといった、体験のシーケンスを重ねていきます。しばしばカーブした仮枠を使って、人々が場所の各部分の中を——そして発見する——ことをうながすようにします。
 われわれの仮枠は、既存の回遊パターンや利用との接続を確立するところから生まれることが多いのです。要するに、都市の延長となるわけです。プロジェクトが隣接の利用や回遊パターンや、周辺地域の各種特徴と強く統合されればされるほど、プロジェクトは成功します。それは独立した構造物としても、近隣の利用に対する経済的インパクトのカタリストとしても。
 今日、われわれの場所づくりのアイデアはデザインの最先端にいます。一般の人々はますます、味気ない郊外開発パターンに不満を抱き始めています。未来はこの不満に応えるよう、ライフスタイルに的を絞るようになるでしょう。それは人々、レジャー、そしてかれらが楽しむような場所を創り出すことです。われわれの六本木ヒルズのプロジェクトはこのトレンドの最先端にあって、人々が働き、生活し、リラックスできる環境を創り出すよう設計されています。この「都市の中の都市」というコンセプトは、東京に文化的な核を提供することで、世界的なレベルの美術館やホテル、商業、エンターテインメントやシネマコンプレックス、庭園やプロムナード、テレビ朝日の新本社、最高水準のオフィス設備と840戸の高級住宅を提供します。

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