趣味はある社会的位置を他から区別する原理として機能する(Bourdieu 1979 =1991: 87-8)


Bourdieu, Pierre, 1979, La Distinction: Critique Sociale du Jugement. Paris: Minuit.(石井洋二郎訳,1990,『ディスタンクシオン――社会的判断力批判Ⅰ』藤原書店.)

 かくして美的性向とは、客観的な安全性と距離とを前提とした、世界や他者にたいする距離を置いた安全な関係の一側面である。〔……〕しかし美的性向とはまた、社会空間におけるある特権的な位置を他から区別する表現のひとつでもあって、その弁別的価値は、さまざまの異なる条件から発して生みだされてきた他の表現にたいする関係のなかで、客観的に決まるものである。およそ趣味というものがすべてみなそうであるように、美的性向もまた、人々を結びつけたり切り離したりする。つまりそれは生活条件のある特定の集合に結びついた条件づけから生まれるものなので、同じような条件から生まれた人々すべてを結びつけるのだが、同時にこれらの人々を他のすべての人々から区別するのであって、それも彼らの最も本質的な点について区別するのである。というのも趣味というのは、人間も物も含めて、人がもっているすべてのものの原理であり、また人が他人にとってどういう存在であるか。そして人は何によって自らを分類し何によって分類されるのか。といったすべてのことの原理であるからだ。

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