LINEの「いつでもどこでもつながる」しくみ(松井 2018: 28-9)


松井広志,2018,「LINEをやめられない私たち」有田亘・松井広志・阿部卓也編『いろいろあるコミュニケーションの社会学』北樹出版,26-30.

 これらの機能(注・LINEの既読やスタンプの機能)は、LINEにデフォルトで実装されたものです。したがって、既読やスタンプなどの機能を前提として、LINEのコミュニケーションが成り立っています。たとえ、自分は「既読」表示を気にしなかったり、スタンプをまったく使用しないという人がいたとしても、相手は既読を意識していたり、スタンプを使っているかもしれません。つまり、コミュニケーションが「情報のやり取り」である以上、LINEというアプリケーションの設計によって、コミュニケーションは少なからず規定されているわけです。

 こうしたLINEのしくみは、より広く考えると、インターネット全般で見られることがわかります。すなわち、私たちが空気や水のように当たり前に思っているあるアプリやwebサービスの機能も、実は誰かが(多くはプログラミング言語によって)人為的に設計したものなのです。もちろん、そうした設計は人々の行為を制限するものであるとともに、あらたな行為を可能にするものでもあります。たとえば、うまく言語化できない微妙な感情を、その気持ちに近い雰囲気のスタンプを送ることで相手に示せます。 こうしたインターネットの特徴は、私たちを取り巻く現実空間の「建築物」のようですね。たとえば、河川に架かる橋や区域を分ける壁を想像してもらえればわかるように、物理的な建築物は、ある行為を可能にするものであるとともに、不可能にするものでもあります。そこから、インターネットにおける「意識しないけれど、行為の(不)可能な範囲を確実に枠付けている設計」は、建築物を意味する英単語である「アーキテクチャ」と呼ばれます。

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