選択の複数性(Giddens 1991=2005: 91-2)


Giddens, Anthony, 1991, Modernity and Self-Identity: Self and Society in the Late Modern Age, Cambridge: Polity Press.(秋吉美都・安藤太郎・筒井淳也訳,2005,『モダニティと自己アイデンティティ——後期近代における自己と社会』ハーベスト社.)

 ハイ・モダニティにおいて個人が対時する選択の複数性は、いくつかの流れから生じるものである。第一に、私たちはポスト伝統的秩序において生活しているという事実がある。複数選択の世界において行為し、それに関わるということは、伝統によって確立された道しるべがもはや存在しない状況において、代案を選ぶということである。したがってたとえばある人は、果物と繊維が豊富で砂糖、脂肪、アルコールが控えめな食事が体のためになり、特定の病気にかかるリスクを減らすということを示す研究結果を無視するという決断をくだすかもしれない。その人は以前の世代が消費していたのと同じような濃くて脂肪と糖分の多い食事に断固として固執するかもしれない。しかしながら、食事メニューに関する選択肢があり、個人は少なくともそれらを意識しているという事実を考えれば、そのような振る舞いもやはり明確なライフスタイルの一部をなしているといえるのである。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です