ポスト・フォーディズム(町村 2019: 452-3)


町村敬志,2019,「格差と階層化」長谷川公一・浜日出夫・藤村正之・町村敬志『社会学 新版』有斐閣,441-72.

 石油危機も重なった1970年代、資本主義は大きな壁にぶつかっていた。そこで姿を現したのがポスト・フォーディズムと呼ばれる諸様式である。消費者の購買意欲を誘うためには、もはや基本機能だけでは不十分である。デザインやブランドなど象徴的な差異を商品に次々付加したうえで、メディアを通じ消費者の欲望をたえず喚起し続けていく必要がある。しかしそのためには、はるかに多種の商品を少量ずつ、しかも安価に生産しないと採算がとれない。このため、フレキシブルな特化と呼ばれる生産システムが模索されていく。

 そのなかには、多数の異分野の業者が空間的に集積し水平的に協業しながら産業クラスターをつくる場合(Piore & Sabel 1984=1993)から、変化する需要に対応し在庫を極力減らすために下請企業を巻き込み高度に効率化された生産体系(ジャストインタイム・システム)を構築する場合まで、多様な例が含まれる。これにともない、労働者に求められる条件もまた変化した。標準化・規格化された労働に対する適応力が重視されたフォーディズムに対し、ポスト・フォーディズムのもとでは、需要の変化に小刻みに対応するため雇用期間の短期化、雇用形態の柔軟化・不安定化が進む。その一方で一人ひとりの労働者には、単なる適応だけではなく、変化への感応性や継続的な自己変革能力が求められるようになる。

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